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  • 店主 角地 俊耶

SENSE


モノを売る商売をしているとある種の2重人格化している自分に気付きます。

ピュアな一人の服好きとして、そして商人としての自分ですが、どちらがどうというハナシではなくどちらか一方であってはならないというのが今までの結論でした。

しかし、最近はいい意味で企業思考が抜けてきたところもあり、適度なルーズさを覚えたり好きならそれで良いんじゃないかというような身勝手さも覚えてきました。

地頭も悪い私がこうして商売をさせて頂けているのは、良くも悪くも感覚だけで物事を考えたりモノを選んだりしている時に起こる偶然の幸運と、よくできたお客様方に支えていただいているからであって、商人としての優れた一面が奏功したような感覚など毛頭ございませんw。

ただ、最近の世の中の空気感や具体的なお客様お一人お一人の些細なツブヤキには大きなヒントが隠れているというこれまた根拠のない感覚を信じ、それを商人”風”にキーワードとして紐解き次へとつなげていくのが私のやり方です。

例えば、ポジティブワードで言えば、ブランドで言う「AURALEE」やそれに共鳴するような「”無駄のない”〜〜」、新しいものが生まれる際の「〜〜”で経験を積んだ”」や、カテゴリーや枠「”を超えた”」など、そのヴィジュアルや記号性が実態よりも先にガツンと印象に届きやすいことが今求められているのであって、情報社会ならではの脳内の感触とでも言いましょうか、そんな風に理解しています。

もう少し因数分解をしていくと、それらは何かに裏付けされた確かなものであることを指しているという意味であり、AURALEEのように素晴らしい素材が作れるブランドから出される「まるでカシミヤのように滑らかなウール」なども前述のニュアンスが感じられ、実際に触ってみるとその説得力のある手触りに「おおぉ〜カシミヤ〜」となるわけですネ。

実態が良いことは勿論、いかに前段階で良いイメージを持って商品と対峙して頂くか、という点はモノを売る側として今本当に重要であると感じています。

逆に気になるお客様のツブヤキをピックアップしてみると、「これって何がすごいんですか?」や「このブランドってどういうブランドなんですか?」というような、目の前にある知らないモノへの警戒心や、もう少し極端なことを言うとキーワードがないモノへのアレルギー反応は年々増しています。

そういう意味では大変モノが売りづらい時代になりましたが、ここ最近、ほんの数ヶ月のことですがそういう束縛から解き放たれてきているようなちょっとした変化を感じることもしばしば見られ、私自身が展示会の時に本能的に選んだものをお客様が同じく直感でお求め頂けるようなケースが増えてきました。

その一例としては、Tシャツで言うところのここしばらく続いていた”ロゴモノ”ブームから”アートモノ”への切り替わりなどで、受動性から能動性へと変化している具体的なアクションだと見ています。

本題が最後になってしまったのですが、Kics Document.から新しいカットソーが入荷致しました。

一見すると、どこにでもありそうなオーバーサイズのカットソーにも見えますが、少し肉感があって天竺なのにとてもスキッとした表面感、ボディーと襟・裾の異素材切り替えでありながら極端なコントラストがない落ち着きの良いハイブリッド感、ワンポケの半袖は唯一のデザインであるポケットをアメリカモノのそれとは違った位置、形に置き換えるデザイン性、白・黒といった普遍的な色すら今の気分に合った色になっている…など、サイズ感や仕立ての良さに関してはお墨付きであるKics Document.のさらなる高みが感じられる、まさに感性が際立つ商品です。

しかし、こんなことを言うとブランド様に怒られてしまいそうですが、特段強烈なキーワードがあるアイテムではありません。

それでも散々モノを見てきた人間をグッと引き込む背景には、表面化されていないだけでやることはやっている、良いものとは必ず伴う何かがあることをカウンターパンチのように知らせるこの商品は、確信的に作るべくして作っています。

ブログでは実物を目にして頂くことができないことが悔やまれますが、そうは言いつつもわかる人にはわかる、或いはすり抜けてしまう方も多いモノでしょう。

こんな良いカットソーが皆様の手に渡り、「なるほど…。」そう思って頂ければこの上ないやり甲斐です。


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