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  • 店主 角地 俊耶

tim. TAIKIMATSUMURA


良いモノを定義するのは比較的簡単だが、お客様にとって良いモノであるかを言い切ることは難しい。

誰かにとっての最適は他の誰かには不適であるとも考えられる一方で、時に誰が着ても不思議としっくりくる服があり、それがtim. TAIKIMATSUMURAの服だと思っている。

洋服屋になりたての頃に上司である男性に食事に連れて行ってもらった時の話で、洋服選びのポイントは「サイズ・色・キャラクター」と言われたことがある。

洋服屋一年生の自分には、それが何を指しているのかすら理解できていなかったと振り返るが、とにかく私の格好はそのどれもが乱れていた事だけは今でもはっきり覚えており、20年経った今ようやくなるほどと頷く事だけはできるようになった。

そんな私が今、誰かに洋服選びのポイントをお伝えする機会に恵まれたとすれば、「自由に着られる服であるか」ということを付け加えたい。

ミース・ファン・デル・ローエが残したUNIVERSAL SPACEというデザイン学にも通ずるかもしれないが、建築物そのものを最低限(床・天井・柱)にすることで利用者にとって空間の自由度が増し、最も使いやすい空間になるという考え方だ。

さて、本題のtim.の服についてだが、予てよりこのブランドをどのショップよりも一推ししたいと考えていたことをデザイナーの松村さんにご相談したところ、今回のモアバリエーションフェアーに話が行き着いた。

セレクトショップである以上、ブランド直営店のような全ラインナップでお客様をお迎えすることができない(実際はできるが、選ぶ=セレクトの本質からしない)中でも何とかブランドの世界観やバリエーションをご覧頂き、様々なアイテムをご試着頂く中ではじめてわかる「そうか、tim.ってこんなブランドなんだ」という感覚を味わって頂きたく、実現することにした。

本日ご来店頂いた、いつも本当にお世話になっているお客様とのお話の中でも同じようなことをお伝えしたのだが、私が理想とするお客様のお買い物とは、私が何も話さずお買い物をして頂くこと。

それはどういう意味かと言うと、これだけ散々能弁を垂れておいて説得力もないのだが、何の理由もなくその商品を気に入るということ以上に良い買い方はないと思っているということであって、逆の言い方をすれば、特殊な商品説明などによって変に買う理由をこじつける必要は全くない。

ただし、聞かれた時にだけ開ける引き出しを数多く持っておくことや、お客様が持つおぼろげなイメージを鮮明にできるようサポートをすることは販売員にとって必要であると考えるため勉強は怠らないわけだが、tim.の服はいつも話す前に着て頂くように心がけている。

初めて着るお客様の多くが綺麗と口を揃えて仰るtim.の服には、語るべきテクニックも腑に落ちる理由も全て存在しているが、その話にまで至ることもなくお求め頂けるのは純粋にそのモノが格好いい、着たいと思える服だということだろう。

サイズ・色・キャラクターなどそれぞれをどう料理するかの問題もあるが、tim.に限っては何のサイズでもハマるような不思議なフィット感があったり、そうして自由に着られる服を目の前にした時の新しい高揚感がこのブランドには確かにある。

9月に入り、いよいよ気分も本格的な秋冬シーズンへ向かう頃。

一人でも多くの方に明日からのフェアーを楽しんで頂ければ嬉しい。


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