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  • 店主 角地 俊耶

Autumn / Winter 2018 - 19


多少の体調不良は全て暑さのせいになりそうな日が続いているが、我々洋服屋にとってはもう秋。

思えば昨年も9月末頃まで半袖で汗と素麺を流しながら過ごしていた記憶だが、ブランド服を扱うショップに気温の待ったはかからない。

個人的にはこの風習(夏に冬服を買い、冬に夏服を買う)は何とかならないものかと思いつつ、何かリアリティーがあることができないかと考えた結果が今回紹介させて頂くパンツたちだ。

先週末に、tim.の松村さんとお食事させて頂く機会に恵まれ色々話した中でもパンツの可能性について盛り上がった。

年中着続ける服(或いは頻繁に着る服)というと、一般的に「シンプルなもの」を指すイメージだが、ことパンツに関しては例外的にデザインの自由度も高く、素材さえ押さえていればあとは自分のスタイルがある限り何だってアリなように感じる。

白いTシャツにも長いコートにも合わせられる感覚さえ自分に備わっていれば、パンツは太かろうが細かろうが、丈さえも特に関係ない。

大事なのは快適性と落ち着く形であるかという点であって、それ故他のアイテムよりも非常に遊び甲斐がある。

デザイナーとしても、パンツは特に作っていて面白いアイテムの一つだそうだ。

私自身、パンツに関してはかなりうるさく、どれだけ時間のない展示会であっても試着をせずにパンツを選ぶことは絶対にないし、どれだけお店が忙しくともパンツのフィッティングでお客様を焦らせたことは一度たりともないと言い切れる。

腰の位置、お客様のヒップやワタリ、ふくらはぎのカーブに至るまで全てのフィット感とパンツの持っている相性を確認する作業はとても楽しく、単純にパンツの形と体型が合っていることで良いシルエットが生まれるとも限らないのがこのアイテムの醍醐味だ。

日本人は全体的に小尻で短足という傾向があるが、そんな方にもオススメできるパンツはたくさんあり、例えば軽快且つ上品なポリエステルのふっくら張り出す形が絶妙なmandoのパンツ。

ウエストは細身の方もぽっこりお腹の方もフォローするシャーリング仕様で、股上も深い。

この股上の深いパンツというのは非常に便利で、ウエストを5cm高くすれば足長に、5cm低くすればコシ履きになる優れものだ。

そして、たっぷりと取られたタックのおかげでワタリから裾まで美しく流れるフォルムが得られ、合繊素材の独特な動き方まで楽しめる。

また、AURALEEから新しくリリースされたテーパードシルエットのチノパンは間違いなく今季もヒットを思わせる完成度だ。

チノクロスという年中履きやすい素材を、これまでにないほどに上品な顔つきにしたこのフィンクス・コットンのパンツは、ウールのスラックスが占拠していたドレス的ニュアンスを一気にフォローするようなことになり、1年前にリリースされたワイド型のモデルはしこたま履いた(実は今も履いている)。

当時からワイドではない、テーパードシルエットを求める声が多かったのでこの機会に新しいモデルが誕生してくれたことは本当に嬉しく、お客様にご覧に入れる前から売れるだろうと確信させてくれるようなアイテムだ。

初代モデルのワイドチノの股上の深さは踏襲し、上品でありながらしっかり抜け感を漂わせる絶妙なさじ加減は健在で、今までよりもすっきり削ったワタリと裾幅の設定は、ドレスのスラックスともチノパンとも違う、オーラリー独自のものとしてまたしてもやられてしまった。

そして、当店のキャラクターをガッツリ立たせてくれているOLDPARKには、そのクリエイティヴィティーが光るSLIDE JEANSをリピートオーダーした。

まず、OLDPARKの良いところは形のリピートをしても元となる古着自体が変わるため、前回と同じものが上がってこないというバラつき具合で、また新鮮な気持ちで同じアイテムと出会うことができる。

このスライドジーンズは、某ブランドの501モデルを原型にした、まさに年中履けるアイテムでありつつ、前後の見頃をスライドさせて形を細くしてしまうといった大胆さが最高のアイテムだ。

単純に前後の見頃をスライドするというイメージでは解決できないような超絶技巧が盛り込まれたジーンズだが、このデニムのパーソナリティーに共感するお客様には替えがきかない唯一無二のボトムスであることは言うまでもない。

そんなわけで、2018年の秋冬シーズン第一回目のブログは、皆様のこれからを長く支えてくれる間違いない一本たちをご紹介。

今シーズンもBechicsにお付き合い頂けますよう、この場をお借りして改めてお願い申しあげます。


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