アメリカの3大デニムブランドといえば、第1にLEVI'S、2番目にLee、そして、それら2社に対抗すべく生まれたブランド「Wrangler」です。
Wranglerの歴史は1947年、第二次世界大戦が終了した直後からで、前身となるBLUE BELL社は1904年よりワークウェア専門のブランドとしてアメリカでは周知された存在でした。
当時既に他のブランドでは、今でいうGジャンが一般的に普及されていましたが、B/B社が目をつけたのはロデオスターやウエスタンムービーなどの衣装デザイナーとして知られたロデオ・ベン氏で、戦略的にワーカーではなくカウボーイへ的を絞った製品の開発からブランドがスタートしています。
Wranglerの初期型である111MJというモデル(通称ファースト)は、その頃にはなかった細身のシルエットによって今までガッチリとしたワーカーの作業着だったGジャンを一変させ、ファッションへと昇華させた名品としてあまりに有名です。
それは、見方を変えればクラシックからモダン、トラッドからモードへの変化であり、同じGジャンが全く違う立場のものへと変わった瞬間でもありました。
愛用者にはジョン・レノンなどアイコニックなセレブも存在し、Gジャンが街着として浸透していった歴史においても111MJは欠かせない存在となっています。
111MJの特徴的なディティールは4つ。
1:フロントのプリーツを打ち止める丸カン
2:胸、袖に付けられたドットボタン
3:肩裏に配されたアクションプリーツと、その裏面にある伸縮ゴム
4:ウエストのアジャスターベルト
それまでは、ボックスステッチでプリーツを止めていたところを切れにくい丸カンへ変更したり、子供服などを中心に使われていたドットボタンを大胆に使用したり、細身のボディーを動きやすくするための工夫がされるなど、これまでのユーザーが抱えていた使いにくさを一掃するようなアップデイトが斬新だったとされています。
そして、2018年春夏シーズンにその111MJを日本のブランドATONが別注にてフルモデルチェンジしました。
ATONでは、デザインの変更点として1と2を残し、3と4を排しています。
そして、大胆にアレンジしたポイントが素材とサイズ感です。
ATONと言えば、素材のブランドと言っても過言ではありませんが、この111MJに採用したのが通称「鬼カノコ」と呼ばれる高密度の凹凸感がしっかりとあるカノコ素材。
糸にはSUVIN COTTONという超長綿でも最高峰に位置する綿を使い、SUVINの特徴でもある毛羽が少なくぬめりと繊細な光沢感がある糸を、特殊な工程を踏みながらながらわざわざ凹凸感のあるカノコに編み立てています。
本来なら、極力肌への接地面が多い方が素材の良さが伝わりやすいその素材を、あえてカノコにした生地は驚くほどにしっとりとしていて、着用時にも明らかな滑らかさを感じることができます。
そして、生地自体の素晴らしい落ち着き加減や大人な顔つきにATONの底力が見られるのは言うまでもありません。
また、このSUVINカノコにはカノコの弱点でもある色褪せをも解決する工夫がされており、美しい黒の深みある色合いが続くように配慮されています。
もう一つ、サイズにおいても111MJの細身のバランスからATONオリジナルの適度なゆとりあるバランスへと変更されており、前述のアクションプリーツやアジャスターベルトを排した理由がわかる設計へとアレンジされています。
ATONについては、私自身書き始めると止まらないので今日はここまで。
(これでも短くまとめた方)
文字面だけでも十分良さが伝わるとは思いますが、この商品はご試着頂ければ逆に説明が要らないような素晴らしい完成度です。
私もしっかり我が物にしていますが、シルエット、素材感、色の深さなど思いっきりツボでした。
LEVI'SでもLeeでもなく、Wranglerをパートナーに選ぶATONのらしさがここにあります。