• Toshiya Kakuchi

憧れと青に込めた想い / vol.1


- 見えにくい入り口



「kolor…ですか?」



私をよく知るお客様に、kolorがベシックスに並んだらどう感じられるか尋ねた時の言葉です。



日頃は取り扱いブランドを決めるにあたってお客様に相談することはありませんが、kolorに関しては日頃から大変お世話になっているお客様のうち何名かの方がどう感じられるかを聞いてから決めようと思っていました。



と、言うのも冒頭の通りの反応が予想される相当な先入観があるブランドで、それも好き嫌いがハッキリしやすいことも想定していたので、私がkolorの品物を使ってこのお客様をあんなスタイルにしたいと思う数名のお客様がどう思われるかはかなり重要でした。



それも、敢えてアレルギーを持っていそうなお客様に聞いてみる…という、”敢えて”という言葉は好きではありませんが、ハレーションが起きそうなお客様にヒアリングをしてどう返ってくるかを確認し、そして一定の可能性を感じることができたので思い切ってエントリーすることにした、というのがkolorのお取り扱いに向けて一番最初にしたことです。



なぜ、そんなややこしいことをしたのかは、この後お話します。





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- ポジティブなハレーション



人がファッション(およびブランド)に要求することには大まかに「承認欲求」と「自己実現」の2種類があると思っています。



先に断っておくと正解がどちらかということではなく、それらは時間や年齢、生活環境や経験によって常に変化していくもので、ファッションを仕事にする私の立場から皆様に予めお伝えしたいことがあるとすれば、自分がいま何故高いブランド物を買っているのか?を客観的に捉えることはとてもオススメです。



kolorというブランドに初めて触れたのは私が25歳の時でしたが、当時当たり前のように買い物と言えばブランド物だった私の頭の中は、「何を着ればカッコいいんだろう」「何を着れば他者と差が生まれるだろう」というような、服好きが最初に陥りやすいモノに頼った思考でした。



大阪から東京に出てきた”オノボリ”な私は、せっかく東京に来たわけだから東京にしか売っていないブランドや、誰かに認められるような服を…というような感覚で服を探していたと思いますが、ある時期目の前にしたkolorというブランドは衝撃としか言いようのない、今までの経験の範囲にない”これぞ東京感”という雰囲気に一気にのめり込んだ記憶があります。



私の場合は、極めてラッキーなことにkolorの洋服をただ買えるだけではなく、それ自体を販売する側にも就くことができたわけですが、その時の自分を振り返ると、kolorというブランドを理解しようとして本人的にはド真面目にkolorらしさの追求やkolorという稀有なブランドの面白さを伝承したいと思っていた筈でしたが、今思えば当時の先輩たちの凄さをよく理解しないままに「難しい服ってすごいよね」「難しい服を着れる人ってカッコいいよね」というような、前述のとおりの「承認欲求」と「自己実現」を私の場合はあまり望ましくない形で(kolorというセンスが保証されたフィルターを通して)叶えているような気になってしまっていたように思います。



そんな青々とした私が徐々に年齢を重ねていき、会社員であったことから色々と立場も変わり都合によってkolorとも少し距離が生まれたある時、初めてkolorを客観的に見るような時間が数年間ありました。



その間にいくつかのことを思ったわけですが、強く感じたことの一つはkolorというブランドがあまりにも完成されている故に、kolorとはこういうもの、こういう着方、こういう思想であるという考え方が私自身固まってしまっていたのではないかいうことです。



キャッチーな外観から得られる表層の印象と刺激的なスタイリング、そしてそれを裏切るように設定された文化的なインスピレーション源やブランドとしてのセンスメイキングがあまりに良くできているため、当時の私はそれらを信じてなぞることで十分に楽しめていたのですが、少しずつ私も大人になり、kolorというブランドがやっているデザインの組み立て方を長期的に観察していくうちに、kolorが持っている"意外と普通なところ”や、それ故の個人との結びつき方なども見えるようになりました。



要は、ブランドの本質を詳細に理解した上で使い手とのハレーションにリーチすることで、強烈な個性を持つプロダクトに引き込まれすぎず、人の個性をより引き立たせるような素敵な表現ができると感じたわけです。



私がベシックスでkolorを検討した際に敢えてアレルギーを持っていそうな方にお尋ねした理由は、そこにあります。





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vol.2 につづく

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