• Toshiya Kakuchi

たぶん、革命が起きる

実に2ヶ月ぶりとなるブログを書いています。



以前にもお話をしたことがありますが、この時期の私は本当に忙しい日々でして、段取りの悪さも祟ってブログやらYouTubeやらがどんどん後回しになってしまう…そんなことをもう5年間も繰り返しております。



そんなご多忙な店主サマが再び動いたということは、皆様どういうことかお分かりだと思います。



今回のブログは是非最後までお読みください。



先日のInstagramにてナゾの革靴を余計な悪態(本当にやめろオレ)と共に発信しましたところ、大変大きな反響を頂きまして、実は入荷2日間で手持ちの在庫をほぼ完売いたしました。



(完売か…と諦めず、この後の楽しいお話の続きにご期待ください)



お買い求め頂きました皆様、というかブランドも価格もわからずとりあえず10万円を握りしめてご来店頂きました皆様、本当にありがとうございました。



さて、本題に入りましょう。






今回ご用意した革靴は、2021年春夏にスタートしたHARROGATE(ハロゲイト)というブランド。



ハロゲイトとはイギリス北部にある都市の名前でもありますが、お察しの通り革靴の聖地イギリスへのオマージュを込めたコンセプトから成り立っているブランドネームです。



日本人の熟練された木型職人と、イギリス人デザイナーが二人で立ち上げた全くの新しいブランドですので、恐らくべシックスでのご紹介が本邦初公開でしょう。

(コロナ対策に向けて練りに練った必殺技の一つがここでまた現れます)



皆様にとって大事なところを先にダダダッとお話ししますが、価格は税抜き29,000円〜30,000円という、驚異的なプライスを実現した店主の血の滲むような努力の末に発掘したネクストバッターです。どうぞよくやったと褒めてください。



さあ、もうこの状況で皆様は購買意欲にハイオクガソリンが満タン注入された筈ですが、さらにサクッと私の思いをお話させてください。



1年程前から、そろそろ足元には革靴が必要だと焦っていました。



”焦っていた”というのが本音で、品揃えをするにあたり圧倒的に必要なものが革靴だという確信だけはあったのですが、正直なところまるで買い付けようと思えるものがありませんでした。





もちろん、AldenやSandersなどのアタリがついたものという点では常に頭の片隅にあり、タイミングを見極めてお店に並べる…という一つのシナリオもあって、正直それが一番濃厚な状況でした。



しかし、ここは皆様にも共感頂けると思っていますが、やはり”今さら”という点で二の足を踏んでいたことも自覚していて、粘りに粘って探し当てたのがこのハロゲイトです。



これまでも理解していたつもりですが、皆様のリクエストは至ってシンプルです。



Alden、Sanders、J.M. Weston、Paraboot、Crockett&Jones…などが良いものであることは理解しているし、もちろん購買リストに入っている。



しかし、僕たちが欲しいものはそんなムードを持った新しくて”今の服”に合うものなんだ、と。



酷なことを言いますが、簡単にある筈がないんですそんなもの。

(知らねーよ、というお声もハッキリ聞こえています)



カバンも同じ状況ですが、これまで革靴は既に出揃った横綱に対して幕下が挑み続ける歴史を何十年も繰り返してきました。





そんな中で、辛うじて食い込んでいったエルメス出身のパラブーツや、近年ではエンダースキーマのような別の切り口での好例は記憶に新しいことでしょう。



しかし、純然たる革靴というぶつかり稽古で横綱に挑んだ者たちが敗れていった姿も20年この業界にいると幾度となく見てきました。



やっぱりオールデンの9901に、ウエストンの180に、パラブーツのシャンボードに、立ち向かうなんていうのはもはや意味のないことで、完成されたものは讃える以外にできることがありません。



では、私たちがそれらを今改めて見つめた時に二の足を踏んでしまうのは何故でしょうか。

それには二つの理由が存在していると考えています。



一つは価格。



これは最もシンプルな理由ですが、革靴は履きたいが頻度や活躍度、そして何より自らの本音の高揚感を考えると天秤がガツンと「買う」に振り切れません。



もう一つは、ルックスです。



歴史的な革靴たちの唯一の弱点として、私個人が近年睨んでいるところですが、時代の進化との僅かなギャップが生まれてきているように感じます。





具体的なことを言えば、「スーツにも合うカジュアルなルックスの革靴」というポジションは、その存在意義が希薄化してきているのはもちろん、広義な意味で世の中のカジュアル化がより一歩二歩先に進んだいま、ちょうど良いという感覚が数年前と比べると変わってきていると思います。



今なら、テーラリングテクニックの入ったアンコンストラクションのカバーオールと、スラックスパターンのゆったりしたコットンのパンツのコーディネートに合う革靴って…と探されているわけです。



当然この場合は、革靴然としたものが少々浮いて見える他、シャンボードのような野外感は僅かにトゥーマッチ。



それもそのはず、私たちはカジュアルな街着に合わせる革靴を探しているので、求めているのは「街を歩くために作られたカジュアルな革靴」ですから。



私が今回、ハロゲイトで買い付けた商品は2種類。



エッジウェア(U-TIP)とカムデン(SIDE GORE)で、それぞれ共通のラストをもとに作られています。



Instagramでも触れましたが、頭の中にあったのは昔チャーチがジルサンダーのために作ったモデルで、それは工法やデザイン自体は完全にドレス靴でしたが、フォルムが圧倒的にその時代に向けてチューニングされた素晴らしい顔つきの靴でした。



お店で最もお世話になっているお客様の一人に、当時のそのシリーズをお持ちのお客様がいらっしゃり、毎回コーディネートの際に「あの靴で合わせてください」とお願いするほど、私の頭の中にはチャーチ for ジルサンダーのバランスがあり、ベシックスの服に一番合う革靴(アルテサノスはモカシンなので除外するとして)は間違いなくそれだと思っていました。





エッジウェアの惚れたポイントを簡単に説明すると、シャンボードのアッパーにオールデンのソールがくっついたような、そんな匙加減の妙です。



立ち上がるアッパーの角張ったメンズらしいカーブに、グッドイヤー製法の力強く過不足のない安定感、そしてダイナイトソールというコンクリートの上で暮らす我々に寄り添った構造。




カムデンは、ショートサイドゴアの絶妙なるボリューム感が最大の特徴で、履き口に向けて完璧な鼻筋を描くエロ丸い曲線と、これまた私にとっては絶対的に探し求めていた「都会的ペコスブーツ」とも例えたい、あのボリュームを1ミリ単位で削ぎ落とし、残して作り上げたこのフォルムは手前味噌ですが靴を知っている人間だから見抜けた奇跡的なバランスであると断言できます。





さあ、私自身もエンジンが全開であるわけですが、ここで一部のお客様に残念なお知らせと激しく嬉しいお知らせをお伝えさせて頂きます。



なんと、私が履けるサイズがありません。

(それでも取扱いするほど惚れている、と言うと逆に説得力があったようですが…)



そして、いきなりですがべシックスの別注を決めました。



と、いうことで vol.2 をしばしお待ちください。


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