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  • 店主 角地 俊耶

New Gold standard


19世紀末にシアトルで創業したF社。

その歴史は深く、あのゴールドラッシュの頃には、アラスカの金脈へ向かう採掘者たちがアメリカを発つ間際の準備場所として、シアトルに拠点を置いたF社で-40℃の極寒地域に耐えうる防寒服を調達していた過去を持っている。

そして、ゴールドラッシュが過ぎ去った後も、過酷な環境で効果を発揮したF社のマッキノーブランケットを使ったクルーザージャケットは、その丈夫さと温かさから極寒地域で働く伐木作業者などから、その信頼性の証として「Gold standard」と称えられた。

今回ご紹介するアイテムは、前置きのF社へのオマージュたっぷりなFILL THE BILLのクルーザージャケットです。

本来はジャケットではなくシャツの形をしているのですが、実はF社ももともとシャツとしてリリースしていながら、防寒性を求めてヘビーな生地を使ったその重量感に、ジャケットを着ているとしか思えないという体感的理由からクルーザー”ジャケット”と呼ばれるようになりました。

(重すぎ!シャツじゃなくね!?って事でw)

さすがアメリカ人とも言えるタフなエピソードですが、それとともにこのクルーザージャケットが暖かい理由はもう一つ、幾重にも重なるポケットは実用性を目的としつつ生地のレイヤー構造も生み出し体温が放出されにくい設計になっているという、ギアとしての服の面白さが詰まっています。

さて、本題であるFILL THE BILLのクルーザージャケットは、本家の姿は踏襲しつつ今の東京を感じる各種アップデイトが見られます。

アイコンでもあるマッキノーブランケットをヴィンテージ調のネップが入ったネル素材に変更し、着丈を短く、身幅を大胆に広くしていますが、最大の特徴はパターン上の肩位地。

<閉じてしっかり首に沿わせると変な具合に>

一般的なシャツの着姿と大きく異なる「抜き」前提のパターンは、近頃よく見かけるようになった襟を後ろから引っ張ったような、わざとだらしなく着る着こなしを自然にその形になるように設計した意図的な異形をデザインにしていますが、一般的なシャツをわざと抜いて着ているとどんどん前に下りてくる(そういう形なので当然)ので、それをいちいちまた後ろに引っ張って…というあの状態にならないようになっているのは一つデザイナーズブランドたる良いところだと感じます。

<開けて抜いて着る前提の設計なのです>

<首裏にあるほんの僅かな抜け感>

そうして本家との明らかな違いを示し、時代に沿う付加価値を添えて作ることは単なる模倣とは大きく異なる、本物を熟知した上でしか成り立たないアップデイトであると言えますが、こういう服は着る側もなんとなくでは着こなせないという面白さも同時に存在します。

パッと見でわかりにくい服を作るのはとても難しいし手間もかかりますが、そうしなければ得られないスタイルがあることを知っている人だけにオススメしたいFILL THE BILLというブランド。

古着のような顔つきをしつつ、古着では存在しないような組み合わせで作られている点は玄人ほど唸らされる魅力ですが、洋服をよく知っている方にしか理解して頂けないという点は困ったところですネ。

New Gold standardたるFILL THE BILL。

服の楽しさを知る皆様へオススメいたします。


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