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  • 店主 角地 俊耶

Suspicious brand 「MAINU」


「マイヌ」と読みます。

皆さまの中で、このブランドを以前から知っていた方は非常に通です。

オフィシャルホームページもさっぱりとした、Instagramもどこか実体があるようでなさそうな、今の時代感覚で言うならなかなか疑わしくも見えるようなブランド。

かく言う私も、このブランドを知ったのが2年ほど前で、色々調べてみましたがやはり実体を掴めず当時はコンタクトを取るに至りませんでした。

私は今まで、自分が着たことがない(試着も含めて)ブランドを取り扱いたいと思うことはなかったのですが、このMAINUは画面越しでも特別惹きつけられるものを感じていたので、その後もずっと脳裏に忍んでいたように思います。

そんな私に契機がやってきたのが半年前。

弊店のオープンからご愛顧頂いている、同じ業界でお仕事をされているO様(お客様)と、MAINUのデザイナーMさんがご友人の関係で、ふとした時にMAINUのお話になり、O様(も前から弊店とMAINU の好相性を仰っていた)の計らいで私とMさんを繋げて頂くことに成功しました。

トントン拍子で話は進み、展示会にてその品物を拝見した時に感じた迫力は今でもはっきり覚えています。

デザイナーのMさんを一言で表すなら、”強い人”というイメージです。

それは、猪木や馬場のソレではなく(古いw)内面が強いという意味で、一見して素人さんではないとわかるその出で立ちと、昨日今日で身につけ始めたものではないというのが1発でわかる様々な怪しい服を迫力満点で着ている、優しい口調とは正反対の自我と趣味の塊のようなコテコテの健全なる服ジャンキー(全て褒め言葉で書いていますので悪しからず)。

実際に、MAINUの服も一つとして”普通に着られる”ものはありません。

どの商品にも語るべきポイントがたくさんあり、また、一目見ただけでハッとさせられるような明確な特徴と興味をさらう技巧が入れ込まれています。

デザインのベースは欧州がメインとなるミリタリーですが、このG-9(BARACUTA)型のジップアップブルゾンも、どこがミリタリーなの?という感じです。

掘り下げると、1940年代にイギリス海軍が使用していたエマージェンシーブルゾン(※1)をベースにフォルムをアップデイトし、対局となるようなアイテムであるG-9型に作り変えたのがこのアイテム。

平置きで1m近い身幅に圧巻されますが、本家G-9とは違う素材を使い、トロみとハリの備わった素晴らしい生地が着用時のシルエットを現代的に見せてくれます。

おかげさまで既に色々なお客様にお求め頂いているのですが、昨日いらっしゃったとてもオシャレなお客様に逆に教わったのが中表にする着方。

一言「良い服は裏側が綺麗なんですよね。」

本当に良いお客様に恵まれているこちらが感動させられる始末でした。

(K様、昨日は色々と勉強になりました!)

インサイドアウトの着こなしはデザイナーMさんの意図したところではない(もしかしたら意図していたかも)にせよ、MAINUの服作りの丁寧さや細部のこだわり具合に改めて感嘆したというエピソードです。

もう一つの「MAE WEST(※2)」というベスト。

この変わった名前の商品もまた、イギリス軍で40年代頃に採用されていたベストがベースになっています。

パイロットの不時着時に着用されたり、当時もアービンジャケットというムートンアウターや夏季では半袖シャツの上から着られていたという説もあり、レイヤーする着こなしがイメージしやすいベストです。

オリジナルのディティールにあるアジャスターはアイコンとして残していますが、オーバースペック過ぎる部分を添削し、使いやすいようにオリジナルにはないポケットを付けたり背中のポケットを使ってポケッタブルにできたりする現代的要素を入れています。

最後のパンツはMAINUの看板商品の一つ。

最大の特徴は、極限まで接ぎ目をなくしたパターンにあります。

最近はよく見かける脇縫い(サイドシーム)のない内股のみ縫われた仕様のパンツは、縫い目をなくすことでふっくらとしたシルエットを得ることができます。

弊店でも人気のmandoのポリエステルのパンツなどが、そのテクニックを上手く使ってあの絶妙なフォルムを作っています。

MAINUの場合は、それだけに飽き足らずポケットの構造も一枚の生地を畳んで縫って袋にしている(難しいので写真だけ載せて説明しませんw)など、型紙レベルに戻すとぐにゃぐにゃにつながった一枚の生地を組み立ててパンツにしているようなものです。

どうしてそんな難しいことをするんですか?と聞いた時にMさんが仰ったのは、

「頭にあったイメージを形にすると、こうなりました。Hahaha…」

でした。

やはりド級の服ジャンキーであり、私とは全然違うタイプの理屈っぽくなく、感覚を大切にそれを形にできる面白いブランドです。

今春夏からジワジワときている「アメカジモード」や「ミリタリー」なテイストでもあるMAINUの服は、東京都内でも弊店他ほとんどお取り扱いしているお店がない非常に疑わしいブランドに見えるかも知れませんが、私はこのブランドの良さを皆様ならお分かりいただけるだろうと確信しています。

是非、一度MAINUの服に触れてみてください。

忘れかけていた洋服でドキドキするあの感覚が蘇ります。

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(※1)エマージェンシーブルゾン

非常時に仲間に自らの存在を気づいてもらえるように、イエローの大きな生地を身に纏って助けを呼んでいた。デザインはフロントを紐で結んで留めるようなポンチョのような形になっている。

(※2)MAE WEST

当時人気だった胸の大きなMAE WESTという女優のシルエットが、このベストに空気を入れて膨らませた時の形に似ていたので通称MAE WESTと呼ばれていた。所謂エマージェンシーベストである。


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