top of page
  • 店主 角地 俊耶

新たなる一歩


2017年秋冬シーズンにローンチしたブランド、nuterm(ニューターム)はご存知の方も多いかも知れませんが「BLACK & BLUE」のデザイナーでもあるFさんの新しいプロジェクトです。

ベーシック且つモダンな東京らしいクリーンさを持った洋服を生み出すのが得意なFさんは、持ち前のパターン技術と素材選定などの強いコダワリから、シンプルなモノにその時代の雰囲気を纏わせてくれる今を感じる品々が人気のデザイナーでもあります。

もともとFさんは、20世紀に日本人デザイナーがモードの世界で飛躍するきっかけとなったブランドで、私が最も尊敬するブランドでもある「C社」と「I社」などでパタンナーとして従事されてきた経験を持つ、腕利きのパタンナーとして名の通った方。その実力と裏腹なお茶目で親しみやすいお人柄も魅力の1つです。

そんなFさんが、今の停滞気味なファッション業界を見渡した時に「次の段階へと歩を進めよう」と立ち上げたのがnuterm(=New term)です。

つまり、新たなタームに入り面白いことをもう一度提案しようという決意でもあります。

nutermでは、常に明確な提案があります。

今シーズンはAddressを文字った”Add-Less”と題して、一つのモノにデザインやアイテムを足し/引き しながら違った側面を見せるコレクションになっていて、それぞれのアイテムをじっくり見てみると何やら意味深なディティールが隠れていたりするのが特長です。

是非、店頭で商品をまじまじ見てください。

少し話は脱線しますが、実はもともとnutermはBechicsではお取り扱いさせて頂く予定ではなく、私は半年前までブランドが始まることすら知りませんでした。

そんな矢先、突然Bechicsに明らかに玄人な方々がお見えになり、その後展示会へのお誘いを頂いたのがnutermとのご縁ですが、事前にネットでお送り頂いた17AWのコレクションルックを見た私は「売るのが難しそうなブランドだな…」という第一印象を受け、正直言うと迷いながら展示会場へ足を運びましたが、ラックに並んだ実物を見て一気に取り扱いさせて頂くことを決めました。

コレクションのルックが特長的でしたので前述の難しい印象を持っていたのですが、会場に並ぶ1点1点の商品は極めてベーシック。それも、素材や縫製のレベルも極めて高いことが第一印象になるような高品質な商品の多さに思わず裏切られたような気持ちにすらなりました。

そして、着るとはじめてわかるとても面白いバランス感覚があり、私が特に気に入っているライダース型のコーチジャケットは、レザーライダースのストイックなシルエットとは対極のゆったりとした形で、ライダースの命とも言えるジッパーには英国ルイス・レザーも御用達のアルバート社のジッパーを採用。一見してタダモノではない高級感あるポリエステル素材の持つ色の上品さが何とも大人の雰囲気を醸し出す、一気にテンションが上がった商品です。

そして、Fさんの十八番とも呼べるシャツアイテムは、「C社」が昔フランスで作製されていた時代のシャツのパターンをベースにした、究極に削ぎ落とされた中にある強いモードの空気を持ったリラックスシルエット型。私をはじめ、あの時代を知る人からすればあまりに嬉しい提案に更に心が踊りました。

Fさんは、このボールドストライプが特に一押しとのことで、違番手の糸をタテヨコで使い分け、更に単糸と双糸とすることで生まれるストライプ柄の際立ち方が特長となる生地を使っています。

その他、現在未入荷のネップツイードのような表情を持つフーデッドニットコートや、既に入荷済みのミリタリーポケットが付いたシルキーなスウェット調カットソーなど、素材もデザインも驚くような隠れ技に満ちた品々を是非ご覧ください。

歴任されたブランドでは、極めて高度な手法からパターンの根幹となるベーシックな技法まで様々なテクニックをストックされて来られたようですが、Fさんのアプローチは常にクリーンで、技が前面に押し出されたというよりもむしろ裏側にしまい込まれたような印象です。

ちょっとした袖の長さから出てくるヨーロッパの感覚的美意識や、じっくり見た時に感じられる日本の高い職人技術など、一つの商品としての完成度の高さが取り扱いさせて頂きたいと思った理由ですが、何よりもネガティブな発言が多いファッション業界に前向きな姿勢で挑むブランドの心意気が私は大好きです。

今シーズンBechicsの目玉の一つとしてスタートするnuterm、どうぞご期待下さい。


閲覧数:569回
bottom of page