All Bluesという、スウェーデンメイドのアクセサリーブランドを新しく扱い始めました。
ここ最近見たアクセサリーブランドの中では際立って良いところがいくつも見られる、Bechics始まって以来のようやく納得のいったブランドです。
まず、簡単にAll Bluesというブランドがどのようなブランドであるかを紹介しますが、2010年に2人の男性が始めたジュエリー専門ブランドです。
美しい公園が広がるストックホルムのヴァーサスタンにAll Bluesのオフィスはあり、彼らは自らの理想とする思想や自然に存在するものたちからインスピレーションを受け、人々の感情や考えを突き動かすためのジュエリーの製作を始めます。
彼らが最初の工房としたのはデザイナーフレドリックの母のキッチンで、そこから世にないクリエイティブな作品を創るための実験を繰り返す中で、何ヶ月もBGMとして流れ続けていたブルースとジャズがAll Bluesというブランドを誕生させました。
All Bluesが最初に作った祖母のためのイヤリングに始まり、彼らはこれまで特定のシーズンや半年に一度のファッションウィークのような強制的な周期での新作のリリースを拒み、あくまで永続性を重んじたコレクションをじっくりと積み重ねていくスタイルを選んできました。
例えるならば、家を建てるように基礎から始め、次に庭にいくつかの花を植えて、素敵なリネンのソファを買うような連続性。
適切なタイミングで、最適なものを加えていくやり方でAll Bluesのコレクションは発表されます。
また、All Bluesのジュエリーは外見的な美しさ以上に人間の思考を刺激し、感情を動かすようなものとなるようデザインされています。
それは、彼らの作品の中にある、世界で37個だけしか作られなかった琥珀のイヤリングが、亡くなった祖母から譲り受けた37個の琥珀があしらわれたネックレスを解体して作り出されたものであったように、その背景の持つ情緒的な美しさこそAll Bluesの持つ力強さに結実していることが伺えます。
次に、All Bluesのモノ作りの側面を説明すると、材料にリサイクルシルバー(リサイクル18Kゴールド)が使われ、ストックホルムの代々続く鋳物職人の手によってプロダクトが作られている点もこのブランドの良さにつながっています。
シルバーに関しては所謂キューニーゴと言われるシルバーの含有率が925/1000といった世界で最も採用されているバランスの材料で、皆様がイメージされるシルバーと言えば大体この925を使っているわけですが、同じ材料を使って異なる見え方となるために様々な途中経過と仕上げが存在します。
色々なブランドをご覧頂くとその繊細な違いにお気付き頂けると思いますが、All Bluesのシルバーは他と比べて白っぽい見た目。
同じ925のシルバーの中でも濃淡があり、電球で言うところの電球色から昼光色までのグラデーションがあるようにそれぞれの輝きが存在しますが、All Bluesの場合はリサイクルシルバーという点と、各アイテムに施された大胆なフィニッシュからその白っぽさが生まれていると考えられます。
先ほどの電球の例で言えば、ラルフローレンやブルックスブラザーズのようなクラシックな売り場には必ずと言って良いほど2700k程度の電球色(オレンジっぽい色)が使われるのに対して、アクネステュディオスやメゾン・マルジェラなどモードのブランドには5000k以上の昼白色から昼光色のような白っぽい光(直管蛍光灯など)が使われています。
言わんとするところは大体掴んでいただいていると思いますが、白っぽい光を放つAll Bluesのシルバーは、TiffanyやCartierのそれとは違ったポジショニングのムードを漂わせる言わばモードのジュエリーとしての風格が存在しているというのが特徴と考えています。
先日アップしたKics Document.のブログにも書きましたが、無彩色をこれからの気分と考えた場合には、2700kの温かい光よりも6500kの緊張感のある光の方がよりスタイルが際立つだろうと感じ、All Bluesのもう1人のデザイナーであるジェイコブさんに急いで連絡をした次第です。
デザインの着想も創造性豊かで、動物園で見たお腹いっぱいの蛇とお腹をすかせた蛇であったり、スウェーデンの海に浮かぶ大きな岩であったり、ある日キッチンで落として割れてしまった卵などからも彼らの作品につながっていきます。
まだまだお話ししたいことはたくさんありますが、気がつけば随分長文になってしまっているようですので、今日のところは一旦このあたりで区切りたいと思います。
最後に少し、興味深いお話をさせて頂きますが、北欧の中でもスウェーデンの方々は人柄の良さで有名らしく、家に入ってきた泥棒が敷地内のプールに落ちてしまった場合に「おい!大丈夫か!?」と手を差し伸べ助けてあげるような国民性を持っているようです。
その後も風邪などを引かないようにと気遣うような、お人好しがスウェーデン人の特徴と言われているらしいですが、実は現地で育ったスウェーデン人から言わせるとそこまでをフェイクでできるのがスウェーデン人だと。
複雑なエモーションを孕んだスウェディッシュジュエリーが持つ狂気もまた、このブランドの魅力の一面だと思うと私はあながち嫌いではありません。
是非店頭で実物をご覧ください。