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店主 角地 俊耶

Tokyo style Dressdown based on European


シーズンが切り替わり、待ちに待った春夏新商品が続々と入荷してきております。

1月の寒い時期に、まだ着ぬ新商品を買ってくださるお客様の気持ちは一つで、純粋にファッションの楽しさを感じてくださっているのだと思うとお店をしている者としてはこんな嬉しいことはありません。

”ヨーロピアンスタイルを基本にした東京式ドレスダウン”

と、私は最近解釈していますが、そのスタイルが完成されたmandoは、展示会のラインナップも他のブランドと比較して多くはなく、毎回お約束になっているタック入りのスラックスや合繊ベースのセットアップなど、売り手も買い手もある程度想定内の商品がラインナップされています。

にも関わらず、今シーズンも立ち上がりから新しいコレクションを楽しみにご来店され、ご購入までして頂くお客様が多数いらっしゃるmandoの新しさとは、どういうところでしょうか?

一つは、何にも似ない確立されたオリジナル性であろうと思います。

例えば、mandoの色や柄は全てオリジナルで生み出されたものであり、柄ひとつをとってもピッチ・配色に非常に細かいこだわりを持たれています。

伝統的なパターンを踏まえつつ、逸脱しない範囲で遊ぶというのがmandoのやり方ですが、私が過去に見てきた生地のどれとも似ないような独自性を持ち、それでいて奇を衒うわけでもなく、時間に負けない永続性もある。つまり、10年経った時にも改めてmandoの生地は洒落ていると感じさせる力があります。

さらに、合繊繊維と一言に括れない表情豊かな素材で毎回斬新なタッチに仕上げて来られる巧さに、お客様も私も引き込まれるのだろうと思います。

そしてもう一つは、あくまで”ドレスダウン”であること。

ドレスの嗜みを知る方が顧客であり、微差に気付きその差を楽しんで頂いているのだと思います。

対義語としては”カジュアルアップ”がありますが、もともとカジュアルなアイテムやスタイルにドレス的ニュアンスを加えていくカジュアルアップと、スーツやフォーマルなどのドレススタイルやそのテクニックをベースにし、カジュアルな方向性に変換していくドレスダウンは着地点が全く異なります。

mandoのドレスとは、ヨーロッパ式(英・伊・仏)のクラシックスタイルがベースとなっていて、その要素をどの程度残し、現代的にしていくか?(=東京らしく)というアレンジがなされることで、毎度の素材使いやアイテムのラインナップも新鮮に見えるというわけです。

実は今回、ジャケットは「ドロップ1」という大胆なリニューアルがされていて、私にはとーーーってもツボでした。

簡単に言えばオーバーサイズ化されているのですが、通常の既製服はプロポーションを良く見せたり、フィット感を良くするためにウエストにシェイプを入れて作る場合が多く、ドロップ6〜7程度(数字が大きいほど絞りが効いている)が一般的に多いと思います。

反対の例を挙げると、ワークウェアのカバーオールなどは簡素な作りの典型ですが、当然のように洋服にカーブを作るなど、面倒でコストのかかる手間を省いているため直線的でカジュアルに見える…というわけで、ジャケットで言うドロップ0が殆どです。

というわけで、mandoの「ドロップ1」というアレンジが、いかに今の東京らしいかがお分かり頂けると思いますが、ドロップ0、或いはマイナスではないあたりが「う〜ん、流石…」。

ちなみに、肩線も後ろに引かれているのですが、こうすることで背抱きが綺麗に見える効果もあり、分量を取っているにも関わらず余計なシワなどが発生しにくい…という話をし始めるとキリがないのでそのあたりはご興味ある方だけ店頭でお話ししましょう。

なにせ、やっぱりドレスのテクニックが随所に盛り込まれているということです。

レーヨン×ポリエステルのブルゾン&パンツのセットアップは、前述の通り、アクア・マロン・エクリュ…etc.といったセンスの良い配色と、レーヨン素材を使った独特な落ち感やグレンプレイドにはあまり見られない脱力感が良い具合にカジュアルに見える、あると絶対に使える一着で、その組下のパンツも薄着になるほどに存在感を増していく今季のマストアイテム。

そして、展示会の際に高巣さんとお話させて頂いた際にポロっと仰っていた「シャツはいま、キュプラコットンが一番良い気がしている」という言葉に私も非常に共感しました。

ポリエステル素材とmandoの関係性はもはや語るまでもありませんが、ことシャツに関してポリエステル素材が積極的に使われないのは、様々な側面があるためだと思います。

実は一般的に、ワークシャツなどはポリエステル×コットンの混紡素材で作られることが多いのですが、仕上がりが堅くドレープが生まれにくい、そして合繊独自の嫌な光り方が生まれやすい。

その点、キュプラ×コットンは非常に上品な顔つきに仕上がり、トロミと着心地の軽さに加え極上の肌触りもある。

何よりmandoのセットアップなどと合わせた時にコットン100%のシャツよりも表情のマッチングが良いという点が、高巣さんにそれを言わせる理由だったのではないかと推察します。

そんな洒落た生地を使ったシャツに、今回どうしてもアンサンブルで使えるスカーフが欲しいと思いワガママを聞いて頂いた別注スカーフも非常にオススメです。

そして、お気付きの方も居られるかもしれない気になる「freedamn」の刺繍は、本来の「freedom」というスペルから変化した60年代頃にヒッピーたちの間で使われたスラングです。

開放的な自由である「freedom」に対し「freedamn」は反抗的な意味を持ち、世の中の不条理やある意味”自由がないこと”を指すような時に使う「freedamn」は、ファッションを開放していきたいというmandoの内なる声なのかもしれません。

最後に余談ですが、18年秋冬シーズンのルックに使われた写真の中で、シルバーの外車が写っていたのはご記憶されていますでしょうか?

この車は実は高巣さんご自身のお車で、1970年から数年間だけ販売されたフランス車シトロエンのSMです。

左ハンドルの2ドア、車幅が広く内部の設計もベテランエンジニアでなければ触れないような車は、ハイブリッドのファミリーカーのような現代の車と比べることはできませんが、クーペでなければ描けないフォルムがあり、それは乏しい感覚で語るなら無駄を作ることでもあろうかと思いますが、その無駄や自由(freedamn)こそが最高の豊かさであることだと思えてなりません。

そんな品の良い嗜好性を楽しむブランドmandoを、今年もBechicsをご愛顧頂く全てのお客様にオススメ致します。


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