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謹啓、ヤマケ様

  • 執筆者の写真: Toshiya Kakuchi
    Toshiya Kakuchi
  • 2020年2月14日
  • 読了時間: 3分



晩冬の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。



前期に続き、当店をご贔屓賜り誠にありがとうございます。



先日大豆を撒いたと思えばにわかに桜が慌て始めたナカメグロにて、いよいよヤマケ様の新作をお得意様にお披露目する時がまいりましたので、ご報告方々しばらくご無沙汰しておりました日記を綴ることにいたしました。



さて、冒頭に申し上げるべきか迷いましたが、前回の日記にて小言を申してしまったことを大変後悔していたワタクシに対し、格別なる御厚情を賜り誠にありがとうございました。





此のほど、先日買い込んだコンピューターを使い「JAN MACHENHAUER」となれない横文字を使いぐうぐると申します大変賢い機械にヤマケ様のアダ名を打ち込んでみましたところ、ようやく、それもカラー像にてワイシャツを召されたヤマケ様のお姿を拝見いたしました。



本業がすごぶる軌道に乗り著名となられたことで慌てて召し替えられたことでしょう。

誠におめでとうございます。






今般、遠く丁よりお届け頂きましたヤマケ様の最新作を明日より販売することと致しますが、その際にヤマケ様の力量に又も舌を巻くような思いをいたしました。



もとよりさながら水彩画とすら表現されるヤマケ様の色使いにおいて、今春は茶を心地よく、それも甚だ小粋、いや誠に蠱惑とすら言えましょう絶妙な据え方に感服いたした次第です。



この茶を何と表現すればヤマケ様から及第させていただけるものかと大変悩み、昨晩は寝言すら申しておりましたようです。



まるで三河の御味噌のような、蜚蠊のような、ワタクシには到底表現が及ばない燦たる色と申せば良いでしょうか。







今春は生成りの履物が流行していることを予見されていたかのような、そんなトウキョウの気分を汲んだヤマケ様の新作はこの蜚蠊味噌色を主とした二種をご用意されておりましたが、看板役者「栗栖」と新入りの「不乱句」までもが小包に入っていたことに大変驚きました。



よほど推奨されていらっしゃるのでしょう、ワタクシにはよくわかります。







着姿に定評のある、落ち着きある佇まいが憎い「栗栖」はもはや万人がその魅力を周知しておりますが、「不乱句」の妙味には誠に注目が止みません。





珍奇とも言われる如月の気候に呼応するような、まるで外套かと見紛う意匠の数々。

白い肌着やらを常日頃纏うワタクシにはあまりに至適な折、またしても銭入れから藩札が次々と姿を眩ましかねません。



シャツは肌着と言い聞かされておりましたワタクシにおいては大変突飛な御衣ですが、お得意様皆様におかれましても随分と奮激されるお姿が瞼に浮かびます。






気付けばトウキョウは日付を変えようとしておりますが、丁は現在申の時刻でしょうか。



ヤマケ様におかれましては、変わらず素敵な創作活動に勤しまれ、今後もどうぞ当店をご贔屓賜りますようお願い申し上げます。



敬白




追伸 


2月14日に茶の召物とは、紳士の心胸を心得尽くすヤマケ様のさり気なさたるやまだまだワタクシには到底及びそうもございません。

 
 
 

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