• Toshiya Kakuchi

奥山メリヤスの皆様へ




奥山メリヤスの皆様、おはようございます。



本日は、皆様の貴重な朝礼時間を無断でジャックさせて頂き、遠く離れた東京の中目黒という街からお手紙を書かせて頂いております。



まずはじめに、45名の社員皆様が最初に思った「誰だお前は?」についてですが、



私は、2020年春夏シーズンより御社BATONERブランドとのお取引を開始した、日本で一番小さな個店を営む、業界歴20年とキャリアだけは一丁前な御社の中で最もお金にならない取引先でございます。



いつも御社の人気ブランドBATONERには大変お世話になり、誠にありがとうございます。



そんな私にお許し頂いた僅か3分のお時間だけ、お耳をお貸し頂けると幸いです。



今日は時間の都合上、たくさんある中から厳選して、皆様にお伝えしたいことを一つだけお伝えします。



それは、「BATONERの商品からは職人の姿が見える」というお話です。



前フリからは想像もつかないような大変真面目なお話ですが、我慢をして続きをお聞きください。



お陰様をもちまして、小さな当店でもBATONERの商品は大変よく売れており、100年に一度の危機といわれる現在でも御社には追加のご相談すらさせて頂く状況です。



つい先日も、BATONERの看板アイテムである5Gの畦目が美しいニットを丸首とカーディガンの2型でリリース致しましたが、もう何年も前から継続的に販売している商品とは思えないくらい、発売日初日はたくさん売れました。





皆様にとっては年中眺めている珍しくもない定番のニットだと思いますが、SHOPを経営する者、そして多くのお客様にとってはようやく冬が始まることをノロシが上がるが如く体感でき、日本中の洋服好きが改めてシンプルで上質なモノの良さを再確認する、そんな真打ち登場感がこのセーターにはあります。



今、東京でショップを営む私たちは、山形の皆様がご想像されるようなウイルス感染者と接するリスクを背負い過酷な毎日を過ごしている…という一面だけではなく、ウイルスの存在を認め、その上でファッションはどのように人に役立てるか?を考える毎日です。



それは、これまでのようにカッコいい姿を見せてお客様の購買意欲を刺激することや、誰かに褒められるブランド性を押し出すことのような瞬間性だけではなく、1日が終わって机に置かれた丁寧に作られたセーターを見たときに「この商品を選んだ自分は間違っていなかった」と感じ、そして明日も明後日もまたそのセーターに袖を通すことを喜びながら眠れる、そのような今日の自分を褒めることができ、明日への期待を持つことができる確かな商品を販売することではないか?とも言い換えられます。



つまりそれは、買うときも、買ったあとも長くお客様を楽しませてくれる商品とも言えますが、その点においてBATONERの商品は大きな役割を担ってくれています。



巷の声に耳を傾けると、この5Gの看板アイテムは畦目の立体感や糸の良さ、度目の詰まった生地の心地良い着用感など、皆様が苦労をして開発された技術は確かな評価を得ており、とどめのプライス設定で他の追随を許さないような人気ぶりです(価格はちょっと安すぎなので、早めに値上げをして社員皆様のお給料がその分上がりますように…)。





しかし、職人皆様の本領が発揮された後ろ肩部分に象徴されるような、目数の設定や編み地の切り替えによる立体感、御社が歴史的に蓄積してきたノウハウ及び、ニットの限界を越えようとする形作りへの挑戦が凝縮されている点は、消費者の目線をリアルに表すSNSのようなツールには残念ながらフォーカスされておらず、ブランドとしてのネームタグばかりが写り込む本質との裏腹な一面も否めません。



その点は、私たち小売店がどう伝えるか?の1点に掛かっていることを再認識しているわけですが、向こう数十年のことを考えると職人皆様がされている日々の努力をもう一度丁寧に、深く伝える必要があるとも思っていますので、今後機会を設けてお勉強をさせてください。



さて、私がこの度BATONER様にお取引を申し出たのは、プロダクトから滲み出る職人皆様の技量と温故知新とも言えるスタイルの美しさに他なりません。



私がこれまで見てきた職人の影が漂うものとは、例えばニューバランスのスニーカーだったり、ミキモトのパールだったり、リーデルのワイングラスだったり、そしてエルメスの革小物であったりします。



それらには、創業当時から変わらないものを作り続ける姿勢だけでなく、養殖技術や足長グラスのような、そこで初めて生まれて後世の原型となるような技術やデザインもあり、そして生みの親が今もそれを丁寧に進化させようとする姿があります。



また、最も大切な点として、彼らが作るものは全て信念がありそれが育ってファッション化したというプロセスが存在します。



私には、奥山メリヤスがそのような礎を築き、未来のニットの原型を作る気がしてなりません。





ニットというアイテムは、クチュールになることもなければ機能をもって人の生活を楽にするものでもないかもしれません。



しかし、目数という制限があるからこそのリンキングの優しさも、編み目一つがデザインになり得ることもニットにしかなく、職人の皆様の力加減なども含めた全ての工程が「製品のムード」に結実するアイテム、それがニット製品だけが持つ良さであり、商品から職人の姿が見える所以(ゆえん)だろうと思います。



ここまで長らくお時間を頂きお話をさせて頂きましたが、どうにも3分で済まなかったのは奥山社長の手紙を読むスピードがいつにも増して遅かったせいではないかと思いますので、本日を節目にこれからはもう早くしろなんて言わせない、引き続き効率を譲り品質をトコトン追求する奥山メリヤス様の社風であられますよう、御社のいちファンとしてもお願いしたいところでございます。



時節柄、急な寒さにお風邪など召されませぬよう、暖かく優しいニットをお召しの上今日もお仕事頑張ってください。



今後とも、ご指導ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。



ベシックス店主 角地

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